狐瓜町商店街の不動産屋さん

「いらっしゃい」 その日、最初のお客は金髪碧眼の少女とメイドだった。 うちは商店街の端っこにある不動産屋。いつもの土地のメンバーならだいたい頭に入ってる。つまるところ余所者だ。 「あの、部屋を、借りたいのデス」 たどたどしい日本語でメイドさん…

月の下で踊り、森の中で歌う

少女は一人、砂漠の街で月を眺めていた。荒涼たる世界に明るく輝く月は優しく彼女を照らしていた。 彼女は手に本を持っていた。遥か異国の地、そこで森の中で歌う少女。人の前に出るのが怖くて一人で....... 少女は一人、新緑の森で風に吹かれていた。鬱蒼(…

迷い込んだ歌姫

音葉と聖は森の川辺で歌を歌ってる。聖は歌の練習として、音葉は気分転換としてたまに、いや、良くここに歌いに来る。 伸びやかな聖のソプラノボイスに合わせるように音葉が音を紡いでいく。 いつしか、その森は「精霊の森」と呼ばれるようになってしまった…

桜の頃

「おー、綺麗ですねー」 ライラが帰りに通った川沿いの土手で声を上げた。桜かあ。私はしみじみと言った。おそらくドバイにいた頃は見たこと無かったのだろう。日本のやり方を教えてあげなければ。 「日本ではね、桜を見ながら食べたり飲んだりするんだよ」 …

お嬢様と私

「あなただけはいつもこの方の味方でいてね」 私が母から受け継いだ言葉。そして、産まれたての赤ん坊の前で誓った言葉。当時、まだ五歳だったけどその時の事は今でもはっきりと覚えている。 「君に似て綺麗な金髪と青い瞳だな」 「肌の色と鼻の形はあなたそ…

「好き」ということ。

「好き」とはなんなのでしょうか? ドロシィさんと二人でお出かけした時に言われたのです。 「世界で一番マスターを好きなのはウチや!」 彼女は語ってくれました。いかに彼女がマスターの事を好きなのかを。 「最初はなー、なんかけったいなよーわからんやつやと…

晶葉とライラの夏休み

晶葉が気がつくと、セミが鳴いていた。 「ここは一体どこなんだー!」 「ここは田舎の保養所でございますよー」 「ライラ?」 「はい。そうなのですよー」 叫びに答えたのはのんびりした声だった。いつも晶葉の助手を務めてくれるライラ。いや、助手という訳では無い…

邂逅〜MYXA〜

その場所は、図書館と呼ばれていた。 仕事帰りに疲れた身体でコンビニ弁当を買って帰る生活。実家に帰る度に早く結婚して孫を見せろとせっつかれているが生憎とそんな宛はどこにもない。俺は今日もコンビニ弁当を買って帰ろうとしていた。目に入ったのはスー…

新月の夜の月と太陽(一斉ソルカマル用)

「誰もいないナ!」 「どなたもいませんですねー」 夜。仕事を終えてプロダクションに帰ってきた二人。プロデューサーはアクシデントがあって他の現場にとんぼ返り。事務所の明かりはついていたが誰もいない。ちひろさんもお出かけのようだ。帰宅すれば良いのだ…

きっかけはナターリア

「ナターリアだヨ! よろしくネ」 その子が転校してきたのはカラッと晴れた青空の五月だった。褐色の肌、人懐っこい笑顔、キラキラ輝く太陽みたいな子だった。 私とは大違い…… 「席は……そうだな山口の隣にしよう」 先生が私の名前を呼ぶ。 「は? ふぁい!」 変な…

恋心

小学五年生の夏。僕は確かに恋をした。 夏休み。父がロケで田舎に行くと言うので、父の食生活が心配だった僕はついて行くことにした。何せ山奥だ。身の回りの世話をアイドルにさせる訳にはいかない。父はプロデューサー。アイドルをプロデュースするのが仕事…

アリス

「どうして……どうして戦わないといけないの!」 アリスは叫んだ。目の前に居るのはアリスの影、シャドウアリス。昨日は二人でお菓子を食べながらどんなイタズラしようか考えてた。それなのに…… 「目を覚まして!」 アリスの声に彼女は答えない。真っ赤な目が爛々…

ハレの日

「姉上はどこに行ったのだ……」 盛大にため息をつきながらアシェンプテルは廊下を歩いていた。 「ここは我らの家ではないというのに」 「おや、アシェでは無いですか。何をしているのです?」 にこやかに微笑むサンドリヨン。本当に何事も無かったかのように振舞っ…

サンドリヨン

貴方に出会えて良かった…… そう思ったのは初めてあったあの日。 出会いは戦場。 私は双剣を、貴方は大振りの大刀を持っていた。 言葉もなく、ただ、目の前の敵を打ち倒すのみだった。いつもと同じ戦場のはずだった。 なのに……何故か貴方の側は心地良かった。…

豆まき

「日の本には豆まき、という風習があるそうですわ」 リンちゃんはアリスのお茶会でカフェフラペチーノを飲みながらみんなに言った。 「へえー、それって面白いの?」 アリスがスコーンにクロテッドクリームを塗りたくりながら聞く。 「なんでも鬼役の人に豆をぶつ…

メアシュネ2

オレがシュネーに会ったのはある戦場での事だった。 そいつは戦場に1人で立っていた。 そいつは戦場で1人で咲いていた。 そいつは戦場で1人で舞っていた。 圧倒的な「白さ」汚れを知らぬ「純潔」 一目見て心を奪われた。 オレは黒き闇の力を持つナイトメア。 …

メアシュネ1

彼と出会ったのは森の中。一人戦う私に何度もちょっかいを掛けてきた。 「なあ、アンタ。ちょっと真面目過ぎるんじゃねえか? もっと楽に生きればいいじゃねえか」 そう言って嘲笑う彼に私はいつも答える。 「別にあなたに興味ありませんから。私には戦わなくち…

おせち作り(その2)

吉備津彦は悩んでいた。 吉備津彦がおせち料理を食べていた時の話だ。 かぐやがお裾分けにとおせちを持ってきてくれた。そのおせちはなるほど美味かった。 そのおせちにサンドリヨンがケチをつけたのだ。本場のフランス料理に劣る、と。 売り言葉に買い言葉…

おせち作り

新年を数日後に控えた早朝、吉備津彦邸の前に1人の洋装の女性が居た。少し緊張した面持ちで扉の前で固まっている。 心情はこうだ。 「来るの早すぎたのでしょうか。でも、料理を作るとなれば色々な準備も必要でしょうし……」 彼女の名前はサンドリヨン。戦場を…

おせち

年の瀬も迫ったある日、吉備津彦は大量の荷物を抱え家路についていた。 「留玉臣め、こんなに荷物を持たせおって……」 ブツブツ言いながらバランスを取る。 「あら、吉備津彦様」 サンドリヨンに声を掛けられたのはそんな時だった。 「おお、サンドリヨンか。すま…

マッチ戦隊リンリンジャー 第三話

迫り来る悪の軍勢、ヴィラン。童話世界を侵略しようと様々な物語から侵略してきた。そう、童話世界は今、滅亡の危機に瀕していた。そんな中輝く一筋の希望の光。それが、マッチ戦隊リンリンジャーである!「炎の続く限り、片っ端から相手になりますわ!」第…

マッチ戦隊リンリンジャー 第2話

迫り来る悪の軍勢、ヴィラン。童話世界を侵略しようと様々な物語から侵略してきた。そう、童話世界は今、滅亡の危機に瀕していた。そんな中輝く一筋の希望の光。それが、マッチ戦隊リンリンジャーである!「炎の続く限り、片っ端から相手になりますわ!」第…

マッチ戦隊リンリンジャー 第1話

迫り来る悪の軍勢、ヴィラン。童話世界を侵略しようと様々な物語から侵略してきた。そう、童話世界は今、滅亡の危機に瀕していた。そんな中輝く一筋の希望の光。それが、マッチ戦隊リンリンジャーである!「炎の続く限り、片っ端から相手になりますわ!」第…