「好き」ということ。
「好き」とはなんなのでしょうか?
ドロシィさんと二人でお出かけした時に言われたのです。
「世界で一番マスターを好きなのはウチや!」
彼女は語ってくれました。いかに彼女がマスターの事を好きなのかを。
「最初はなー、なんかけったいなよーわからんやつやと思うとった。でもなあ、優しさはわかってきた。家事もしてくれるし、戦闘の時も心配してくれるし、ベストパートナーやと思うとる。マスター大好きやで。美味いもんもくれるしな」
そう言って彼女は笑いました。私はずっとそれを聞いていてその後口を開いたのです。
「私は、好き、というものがよく分かりません」
おもちゃ箱の中でガラクタとして放置されてた私を見出してくれて使命と名前をくれたのはマスターです。マスターは丁寧に私のネジを巻いてくれます。暖かく流れ込んで来るのは恐らくマスターの愛なのでしょう。私には感情はありませんが、マスターに触れられる度に暖かくなっていくのを感じます。マスターに名前を呼ばれる度にドクンと鼓動が跳ね上がります。マスターと一緒ならどんなヴィランも怖くありません。マスター、マスター、マスター。ずっとずっとそのお名前を呼んでいたい。四六時中お傍に侍りたい。私には感情はありませんがその方が効率的だと感じるのです。でも、不確かな事なので口には出せません。沈黙だけです。
「ヨッシャ、勝った!!!」
ガッツポーズでドロシィさんが叫びました。その時です。
「何が?」
聞き間違えるはずのない優しい声がしました。マスターです。またドクンと鼓動が跳ね上がります。こういう時は上手く喋れなくなります。故障でしょうか?
「えと……どっちがマスターのこと……す、す……好きかと云う……」
しどろもどろになってうまく説明出来ません。好きとはなんなのでしょうか。それを聞いてマスターはニッコリと微笑みながら私を抱き抱えました。
「ウィナー! 圧倒的ウィナーだよ!」
「な、なんやてえぇぇぇぇ!?」
えええ? なんなのでしょうか、なんなのでしょうか、私はよく分からないうちに勝ってしまったようです。でも、なぜだかとても暖かくて幸せな気持ちになりました。
マスター、好き、という気持ちが分かるまでずっとあなたのそばにいさせてくださいね?