新月の夜の月と太陽(一斉ソルカマル用)
「誰もいないナ!」
「どなたもいませんですねー」
夜。仕事を終えてプロダクションに帰ってきた二人。プロデューサーはアクシデントがあって他の現場にとんぼ返り。事務所の明かりはついていたが誰もいない。ちひろさんもお出かけのようだ。帰宅すれば良いのだが、なんだか話があるとかでプロデューサーから待っておくように言われていた。窓から二人が外を眺めると綺麗な星空があった。
「今日の星空はスッゴクキレイだナ!」
「ああ、今日は新月なのでございますねー」
「シンゲツ?」
「はい、月が太陽を隠してしまうのですよー」
「太陽をヒトリジメか? ズルいゾ。太陽はミンナを照らさないといけないンダ」
「でも、気持ちはわかるのですよー。太陽さんはぽかぽかしますから気持ちいいのですよー」
「ナターリア、太陽大好きなんだヨ! ナターリアも太陽みたいになりタイ」
「ナターリアは十分に太陽みたいなのですよー。キラキラ輝いて眩しいくらい……わたくしはそんな風には輝けませんー」
弱気なライラのセリフにナターリアはムッとしながら頭をぐしゃぐしゃした。
「あうー、何をされるのですかー?」
「ライラは綺麗ダゾ!」
「え?」
突然の告白にライラの心臓がドクンと跳ねた。
「いつもそこにいてニコニコしてる……優しく包んでクレル……そんなホッとするカンジ?」
「ナターリア……」
「ナターリアは日本に来たばっかりの時、センザイ?の写真をとるのに上手くできなかったンダ。今もジットシテルのは苦手」
ライラの顔を見ながら少ししょんぼり目のトーンでナターリアは言った。
「ライラと出会って、すごくホッとした。オシトヤカってコウなんだって。だからライラはナターリアのアコガレなンダ」
はにかむようにナターリアが笑う。いつものはじけるような笑顔とはまた違う顔。
「ライラさんは、お家賃貰えたらなんでも良かったのです」
ライラはその笑顔に向き合い静かに語った。
「頑張って働いて、お家賃払えて、アイスが食べれたら、幸せなのでしたー」
「ライラ?」
「でも、ナターリアに出会って、みんなを照らし続ける輝きを眩しいと思ってしまいました。ナターリアはわたくしの憧れなのですよー」
「あはは、それじゃ、オアイコだナ!」
「そうですねー。……月が太陽を隠したかった気持ちが分かるような気がしますー。ほんの少しの間だけでも……」
「太陽の気持ちも分かるゾ。ずっと迷惑カモだけどソバにいたいンダ!」
「迷惑なんて思ってませんよーナターリア?」
「ウン、ダカラ……」
ナターリアはライラの手を取ってしっかりと握った。
「アノ日、二人で誓ったヤクソクおぼえてるカ?……二人でステージで歌おうっテ」
「はい、絶対に果たしたいのですよー。忘れるはずがないのですよー。ライラさんの心に刻み込まれているのですよー」
「早くかなえたいナ! 世界中に二人の歌を届けるンダ!」
「はい、一緒に頑張りますですよー! あー、でも」
「?」
「あまり早いとパパにバレて連れ戻されてしまうかもしれませんのでちょっとゆっくりめをお願いするのですよー」
二人は目をぱちくりさせてお互い見つめあったあと、互いに笑いあった。笑い声は段々と大きくなって事務所中に響いたのだった。
それを見ていたのはただ星空だけ。