メアシュネ2

オレがシュネーに会ったのはある戦場での事だった。

そいつは戦場に1人で立っていた。

そいつは戦場で1人で咲いていた。

そいつは戦場で1人で舞っていた。

圧倒的な「白さ」汚れを知らぬ「純潔」

一目見て心を奪われた。

オレは黒き闇の力を持つナイトメア。

だからなのか?

光に、白に、輝きに。

負けるものか。

オレが必ず引き込んでやる、終わらない悪夢にな!

 

それからオレは彼女を見ていた。

彼女は真っ直ぐに、愚直に敵に突っ込んで行く。

見てて危なっかしい。

つい、手が出ちまうこともあった。

「なんで、私につきまとうの?」

そんな事も言われた。

正直自分でも分からない。だから答えた。

「アンタを終わらない悪夢に落としてやるためさ」

 

そして、「終わり」はやってきた。

合流する途中で遭ったヴィラン。死闘の末に奴を倒して彼女の元に辿り着いた時、彼女は眠りの呪いに堕ちていた。

「間に合わなかった様だな、今日は」

こいつがいつも彼女を狙っていたのは知っていた。オレのミスだ。だから……

「心配ねえよ。オレが貴様を倒せば済むことだ」

先程までの死闘で満身創痍。状況的には不利。それでもやらなきゃいけない時はある。

「黒き闇の力、解放しよう」

オレは武器を手に駆け出した。

 

辛うじて奴を倒した時にはオレは全身から血を流していた。死滅の呪い。眠りの呪い。縛鎖の呪い。身体が重い。全ての呪いをシュネーに当たらないように受け止めたのは無茶だったのかもしれない。

「……起きろよ、シュネー。オレ以外の悪夢に囚われてるんじゃねえ!」

オレは力を振り絞り、こんな身体で出来る唯一の解呪法を行った。

シュネーの唇は粉雪の様に柔らかく透き通っていた。

 

「よう、お目覚めかい?」

ゆっくりとシュネーの目が開く。目の前が赤い。血のせいだろうか。

「貴方……どうして……」

「言っただろ、悪夢を見せてやるって。貴様を悪夢に捕らえるのはアイツじゃない。このオレ様だ!」

「でも、そんな傷……」

なんだ?  声が震えてる。こいつ、泣いてんのかよ。しょーがねえなあ。

「今、お前の頭の中は俺でいっぱいだろ?  ザマアミロ」

頭がふわふわする。意識が遠のいて行く……。

最期に笑って欲しかったぜ。

オレはそう呟いて重い瞼を閉じた。

酷く眠い。