邂逅〜MYXA〜

  その場所は、図書館と呼ばれていた。

  仕事帰りに疲れた身体でコンビニ弁当を買って帰る生活。実家に帰る度に早く結婚して孫を見せろとせっつかれているが生憎とそんな宛はどこにもない。俺は今日もコンビニ弁当を買って帰ろうとしていた。目に入ったのはスーパー銭湯。2階がゲームコーナーになっているところだ。久々にゆっくりと湯船に浸かりたいと思った俺は1000円払ってゆっくり休めるコースにする。合間に何かゲームをするのも悪くない。明日は休みだし、のんびりしよう。そう思っていた。一風呂浴びた後にゲーセンへと行くべく通用口の扉を開いた。

  そこにあったのは図書館。何万冊もの本がそこにあり、一人の女性(おっぱい大きい)が笑顔を浮かべていた。

「図書館へようこそ。素質あるものよ」

  その女性はマメール・ロワと名乗った。ラヴェルのピアノ組曲だっけ。確かマザーグースが元だったな。

「闇の軍勢が迫っています」

「は?」

思わず間抜けな声を出してしまった。

「あなたにこの筆を、神筆を渡します。テイルマスターとなって物語の主人公と一緒に闇と戦ってください」

  わけがわからないよ(QB並感)

  その後詳しい説明を聞くと、お伽噺の内容って元々は戦記なんだそうだ。それで物語の世界を闇が侵食してるからそれをなんとかして欲しい、との事。まあ事情は分かった。

「では、相方となるキャストをお選びください。それと、チケットをご購入ください」

  金取るのかよ!  あ、お金じゃなくて俺の体内にある魔力をチケットに変換して物語への切符にするって?  ああ、本当にお金を払わなくてもいいのか。イイセカイダナー()

  マメールに連れられて引き合わされたサンドリヨン。とりあえず初めに一緒にやってくれるらしい。

「よろしくお願いしますわね!」

  彼女はおっぱいぷるーん!とさせながら答えた。

  

  そのまま転送円に入って本の世界へ移動した。ここには闇の軍勢は特に居なくて戦い方を学ぶための場所だそうだ。ま、チュートリアルやね。サンドリヨンは剣から斬撃を飛ばして練習用の兵士を飛ばしていく……のはいいんだけど揺れすぎじゃね?

  一通り戦闘した後に元の場所に戻ると他にキャストが増えていた。

吉備津彦。桃太郎だな。暑苦しい。

美猴。西遊記? 毛深いからパス。

ピーター。軽そうだしうるさい。

シレネッタ。うん、いいおっぱいだし褐色肌好きよ? でも、刺激強くて戦うどころじゃ……

アイアンフック。渋いッスね。なんか頭上がらなそう。命令するとか無理無理。

リトルアリス。あー、うん。とりあえず人の話聞いてくれるかな? いたずらやめて!

……なんかアクの強いのばっかだな。こん中から選ぶん?  と思いふと、視線をずらすとそこには裸足の少女が隅っこに隠れていた。俺は惹かれる様にその前に歩み寄った。

「君は?」

「私はミクサ……ミクサだよ」

  小さな手。そして栄養不足そうな身体つき。

「おい、なんだこれは、ボロボロじゃないか!」

  怒りに我を忘れて叫んでいた。

「その子はマッチ売りの少女。物語がそうなっていますので……それを変えることができるのは神筆使いたるテイルマスターだけ」

「わかった。それなら俺はこのミクサを選ぶ!

もう、この子に寂しい思いもひもじい思いもさせるもんか!」

「そうですか……では」

  マメールはそう言うと神筆に触れた。神筆が輝きミクサの名前が刻まれた。ミクサは静かにそしてゆっくりと俺の手を握って言った。

「んん……どうも……これなら、もう、寒くないね」

  その小さくて力強い温もりに必ずミクサを幸せにしてやろうと決心したのだった。