サンドリヨン

貴方に出会えて良かった……

そう思ったのは初めてあったあの日。

出会いは戦場。

私は双剣を、貴方は大振りの大刀を持っていた。

言葉もなく、ただ、目の前の敵を打ち倒すのみだった。いつもと同じ戦場のはずだった。

なのに……何故か貴方の側は心地良かった。

「共に進もうぞ!」

そう言った貴方を眩しく思った。その大きな背中に記憶の彼方にある父の姿を感じた。

自分が強くあらねばと思っていた。それはもう「呪い」のようだった。ビクトリアス様から剣を受け継いで自分しか頼れる者は居ないと思っていた。

一人でないと、一人で頑張らなくて良いと気づかせてくれたのは貴方だった。

森でも砂漠でも海でも貴方は常に私と共にあってくれた。

貴方とならどこまでも行けると思っていた。

 

でも、私はシンデレラ。12時の鐘は鳴り響く。

 

ジュゼ。彼女はそう名乗った。全てを呪う様に動く人形。それは災い。早くするりと入り込んで来た。

そう、一瞬の出来事。でも私はその瞬間を忘れることが出来ない。

彼女の爪が貴方の胸元にくい込んでいた。本来なら私の胸元に刺さっていたはずの爪だった。

「サンドリヨン殿……無事、か?」

口から血を吐きながら貴方は言った。

吉備津彦様!」

それ以上は声にならなかった。

「案ずるな、俺は不死身……だ」

貴方の身体が黒く染まっていく。これがジュゼの「呪い」

「サンドリヨン殿は逃げてくれ……そして皆に伝えよ」

息も絶え絶えになりながら貴方は言う。

「この呪いに気をつけろ……と」

胸元から闇が広がっていく。貴方の体を黒い闇が染めていく。

「サンドリヨン殿……どうか逃れてくれ……」

「そんな、吉備津彦様を置いていくなど……」

「頼む、このままではサンドリヨン殿に危害が及んでしまう。それだけは……」

「でも、でも……」

貴方は何かを決した様に大刀を振るった。

「俺が最期の道を拓く、迷わず進め!」

一閃。私は衝撃波と共に飛ばされ……気づいた時には仲間のところに居た。

 

あれから私は仲間と共に再びここに来た。目の前にはジュゼと闇に染まった貴方。

「必ず、取り戻します!」

そして私は双剣を振るう。仲間たちと共に。